CELLMate

第23回 エンターテインメント部門 優秀賞

CELLMate

映像作品

Solmaz ETEMAD [イラン]

作品概要

10歳前後と思しき少女ラナは一日、鳥かごが置かれた中庭で無邪気に小鳥と遊び、洗濯物を干したり本を読んだりして一人過ごしている。外からは子どもたちの笑い声が聞こえてくる。そこに白髪の男性が帰宅する。ラナは男性の指示に従い、タオルや飲み物を彼に運ぶ。物語の終盤、部屋の片隅でうずくまるラナに対して男性は優しい言葉をかけ、その手を引いて家の中に入っていく。窓越しに見える壁には、この男性とラナの結婚式の写真が掛けられている。色彩豊かな映像の最後には、「世界では毎年1,200万人の、つまり約2分間に1人の割合で18才未満の少女が結婚している。」という文字が映し出される。Cellmate(「刑務所の同房者」の意)と題されたこの作品は、子ども時代を奪われてしまった少女の姿を通して、こうした最悪ともいえる状況においても希望を持ち、立ち向かう少女や女性たちの存在を世界に訴えかける。

贈賞理由

少女は美しい。壊れそうで尊く美しい。少女から見る世界も映像の中で、輝いていて希望に満ちていて美しい。水面に浮かぶ花。洗濯物に差す光。すべてが潤しく眩い演出に我々は魅了された。しかし、この世界を進むと意外な現実を叩きつけられる。15歳に満たない少女の運命は決して美しいものではなかった。むしろ、はじまりの光をも恨むほどのショックが待ち受けていた。壁に掛かる絵など、ここに映る美術のすべてが怖くなる。そして、世界にはこの少女のような状況が溢れている現実を知る。都合よく美しさに甘えて見ていた我々は、この社会においても何も真実を知ることもなく生きてきたのかもしれない。少しでも多くの人にこの現実を知って欲しいと思った作者の思いを強く受け止められた。すべてが美しく計算され尽くした演出だからこそ、壊れそうな少女の思いとメッセージが生きたのだと思う。本当に伝えたいことは、美しい靄に包まれていたほうが届くのかもしれない。(森本 千絵)