海獣の子供

©︎ 2019 Daisuke Igarashi・Shogakukan / “Children of the Sea” Committee

第23回 アニメーション部門 大賞

海獣の子供

劇場アニメーション

渡辺 歩 [日本]

作品概要

五十嵐大介の長編マンガ作品『海獣の子供』を原作とした劇場アニメーション。主人公は海辺の町に住む中学生の少女、琉花。彼女が夏休みに出会ったのは、ジュゴンに育てられた海と空だった。超人的な能力を持つ2人は、原初の生命を海の底で再び誕生させるための「祭」の鍵を握る存在。あらゆる海の生命が集うこの「祭」の参加者に選ばれた琉花は、数多の生物とともに壮大な奇跡を見届けることになる。本作は、手描き作画と3DCGを高度に組み合わせることで制作された。手描きの線による有機的な動きが、登場キャラクターや、雨や波などの自然現象に強い生命力を与えている。一方で、3DCGのアニメーションは海洋生物を中心に使用、作画監督が描いた線を忠実にトレースするため、カットごとにモデルを調整するなど、手描きに近づけるための膨大な労力が投入されている。手描きでしか実現し得なかった表現の領域に、3DCGを限界まで近づける努力によって、原作の生き生きとした線の力を余すことなく映像化した。観客と等身大の少女である琉花を巻き込んでいく、人知を超えた大きな力を、膨大な技術の蓄積で動かすことにより、新たな領域の視覚表現を実現させた。

贈賞理由

冒頭から水のきらめきに目をひかれる。水に加えて光の描写が美しい。原作のソリッドな絵柄を再現しつつ柔らかに動かすアニメートは全編素晴らしい。開放的な夏の描写に対しての主人公の閉塞感に「温かなのに冷たい」という感覚を覚え、それがすなわち「海」の中での体感への導入なのだということに気がつく。振り返ってみるとあらゆる描写が「海」へ導かれている。それゆえに海と空がひとつながりに続いているような、それこそ宇宙を感じる瞬間が度々あった。本作では原作と異なり、主人公視点にしぼったがゆえに2人の少年は謎の存在となり、躍動する彼らへの主人公の憧れを描くことで、より後半への驚きを増す。観客に解釈をゆだねる後半の展開にはいろいろと意見はあるだろうがここまで見る者の感性に訴える長編作品というのは滅多にない。正直良いものを見させてもらったなあという思いが勝った。全員一致で大賞に決定した。(佐藤 竜雄)