花と頬

©︎ Kei Itoi / Le Paradis / Hakusensha

第23回 マンガ部門 新人賞

花と頬

イトイ 圭 [日本]

作品概要

ミュージシャンの父と2人で暮らす女子高校生・頬子。頬子と同じ図書委員になった男子高校生・八尋は、頬子の父のグループ「花と頬」のファンであり、頬子がその娘であることを見抜く。本好きの頬子と、音楽好きの八尋は、私語厳禁の図書室で筆談をしながら、お互いのことを少しずつ知っていく。八尋に強く惹かれていく頬子だが、八尋が好きなのは父の音楽であり、その娘であるから自分と親しくなったという事実が重くのしかかる。次第に明らかにされていく、頬子の父が頬子に隠していた母の秘密、過去のトラウマから来る八尋の恋愛観。2人の出会いが、ひと夏の物語となっていくさまを静謐な筆致で描いた。

贈賞理由

当たり前のことに光が当たる時が来た。そう感じた作品である。マンガの描き手の、版元の、読者の、長らくの忘れ物がここにある。定期刊行物である商業雑誌を発行し続けるということは、なるだけ長く安定的に執筆、掲載でき、なるべく多くの読者を得る必要があるということである。そのためのありとあらゆる工夫と苦労を「人は、人の気持ちに関心を持ち、感応する」というシンプルな真実があっさりと吹き飛ばす。この作品がマンガに関わる人間に思い出させることは、とても大きい。(西 炯子)